リベラルアーツカフェ113
子どもと科学と〇〇〇
リベラルアーツカフェVol.113レポート
リニューアル第2弾は、地元宇都宮大学の現役学生さんで、子ども科学ラボという学生団体の代表を務められている、斎藤すみれさんをお招きしました。今回も全国各地からご参加いただいています。ショートバージョンということで、自己紹介タイムを経て、早速スタートです。
まずは、斎藤さんの自己紹介から。斎藤さんは山形県の尾花沢市のご出身。実家はスイカ農家を営んでいるそうで、夏が収穫のピークとなり、家族全員が忙しかったため、夏休みはほぼ出かけることがなく、散歩と読書が趣味だったとのこと。
高校時代に宇都宮大学の「iP-U」というプロジェクトに参加したことがきっかけで、宇都宮大学を受験されました。「なぜ山形から宇都宮?」と尋ねられることも多かったそうですが、たまたま申込のタイミング的にiP-Uがあったとのことです。無事、iP-Uのメンバーに選ばれ、期間中は月に3回ほど、新幹線で宇都宮まで通っていたそうです。
iP-Uに参加してから斎藤さんは、「みんなめっちゃ科学体験に行ってんじゃん!」と思ったそうです。
「もし私が違う場所に生まれていたら?」
「もしもっと近い場所に体験できる場所があったら?」
「もし私の家がスイカ農家じゃなかったら?」
・・・といった、学びの機会の差を感じたようでした。
この想いがやがて、子ども向け科学教室開設へのきっかけとなっていきます。斎藤さん曰く、自然体験や芸術的体験の機会が失われている子どもたちのいわゆる「体験の貧困」という問題意識を持っているとのことです。これをもっと広く捉えると、金銭的貧困だけが引き起こすものではなく、「保護者の送迎が難しい」「小さいきょうだいが居るために保護者同伴が難しい」「そもそも近くに体験場所が無いという地理的条件」といった、普通の家庭環境でも十分起こり得る、ということだそうです。このお話は、我々リベラルアーツとちぎの活動にも繋がることでもあるので、ひしひしと感じております。
この体験の貧困を斎藤さんのできることで解決したい、という所から「地域にある理科実験教室」の開催を思い付きます(ちなみに斎藤さんは農学部の学生)。斎藤さん曰く「できることがそれぐらいしかない」「子どもや親にとって近い場所で低予算で体験できるもの」「どうせなら自分が一番楽しい!と思えるもの」というのがその理由でした。
普通の学生ならば「こんなことできたらいいな」という想いのみで留まることも多いと思いますが、斎藤さんは、自身の小さい頃の夏休みの空白を埋める勢いで動き始めます。当時、始めるにあたって持っていなかったものが「場所」「お金」「経験」。
まずは経験を積もうと、県のNPOボランティアセンターを訪ねたところ、シモツケラボを紹介いただき、3か月ほど通いながら、実践と経験を積みました。(シモツケラボさんは以前、サイエンスらいおんカフェのゲストにもお越しいただきました。) その後、学内の色々な先輩などに「実験教室をやりたい宇大の農学部の子がいる」という話をし、口コミで広めてもらうという作戦に出ます。SNSを使い始めるのはこの後で、まずはリアルに「変わった子がいる」という存在を知ってもらう方向で、様々な所に顔を出していたそうです。そうすると、縁が縁をつなぎ、「大学近くの小学校の寺子屋事業の一環で実験教室をやりませんか?」という話が舞い込んできます。
経験と場所はある程度解決してきました。お金について、現在は助成金や参加費等で運営を賄っているとのことですが、斎藤さん自身の経験からは「一番大事なのは、自分の立ち位置について、ちゃんと言えること」だそうです。また、余談ですが、学生の本分である「単位」はしっかり取得しているとのことです。ご安心ください(笑)。
現在の活動としては、小学校での依頼教室のほか、長期休みには自主事業としての教室、他にも市内の子ども向け施設での教室や企業からの案件相談など、活動の幅が広がってきているそうです。今後について、ご自身では「内容の充実化」「将来教育系に進みたい学生が学外で授業経験を積める仕組みづくり」「地域コミュニティ内でのお金と経験の循環づくり」などを実現できたら、と語ってくださいました。
残りの時間は、質問・感想タイム。主なものは以下の通りです。
実験教室実施の効果(反応など)はどんな感じでしょうか?
どんな実験をしてますか?
内容の充実でどのような方法がありますか?どのような内容が子どもに好まれますか?
教室運営で大変なことは何ですか?企画、運営、資金、子供の指導など
実験の原理みたいなことにも踏み込みますか?踏み込むとしたらどの程度?
聞きにくいんですが、これはやらなきゃ良かったことってありますか?実際の実験内容でも、企画や準備などでもいいです。
東京の小中の出前授業をしたことがあります。
私も子ども向けの科学教室の活動を始めたときは、学生でした。環境が異なる点も多いのですが、自分の経験と照らしながら聴いていました。共通する点もあれば、異なる点もあり…
やりがいは何ですか?何が続けるモチベーションですか?
貧困を「貧困」として認識できない状況に追い込まれていたり、または相談できることを知らない事実を耳にするとヘコみます。ヤング・ケアラーも問題ですよね。大人から橋渡ししないいかないと。。。先ず一歩を自ら進めたことはとても立派なことだと思います。(感想)
科学実験教室を入り口にした地域つくりにも突入しつつあるかも?
現在活動している団体は、長く続けていく、残していくつもりでしょうか? その場合、大学を基盤とし学生団体とするか、地域を基盤とする団体とするか。
教えたいことと、子供が喜ぶことが違うことが違うことがありませんか?
斎藤さんと私との出会いは、数か月前に宇都宮市内で行われていたスタートアップイベントでのピッチ発表でした。斎藤さんが一歩外に踏み出して発表したことがご縁で今回のゲスト出演につながっています。今日のカフェでのお話も普通の大学生の語り口で、教室参加者との距離感も程よい感じなんだろうなぁと思わせるフランクさが心地よいカフェでした。
[文責:藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ 代表)]
リベラルアーツカフェVol.113開催告知内容
2022年7月までとちぎサイエンスらいおんにて実施されていた「サイエンスらいおんカフェ」を引き継ぐ形で、「リベラルアーツカフェ」として継続しております。
9月の話題提供者:斎藤 すみれ(さいとう すみれ)さん
(子ども科学ラボ代表・宇都宮大学農学部2年)テーマ:子どもと科学と〇〇〇
日時:9月23日(祝)10:00-11:00
開催場所:オンライン開催(zoom利用)
参加費:無料
定員:20名
お申込み
zoomでの登録フォーム申込となります。以下のフォームからお申込みください。
(受付終了しました)
登録後、zoom情報がメールにて届きますので、当日はそこからアクセスしてください。
締切は当日朝9時までです。
ご質問等は info@la-tochigi.net でも受け付けます。
カフェリニューアル第2弾は、フレッシュな学生さんがゲストです。宇都宮大学農学部2年の斎藤すみれさんです。
齋藤さん、ただの大学生ではありません。子ども科学ラボという学生団体を設立し、地域の子どもや親子などを対象に科学教室などを開催しているメンバーでもあります。以前、サイエンスらいおんカフェにお越しいただいたシモツケラボさんとも交流があるとのことで、なおのこと、親近感が持てますね。
宇都宮に来た背景、科学教室開始に至る想い、これから先の展望など、ご自身の過去・現在・未来について話題提供いただき、皆さんとの対話を通じて、これからの活動に弾みをつけていただければと思い、今回のゲストにお招きいたしました。
コロナ下で、大学生の生活や活動なども大きく変化してきています。以前よりも、街や地域に貢献したいという活動が増えてきているように感じます。その中でも科学やサイエンスを通した活動というのは、まだまだ珍しいかもしれませんね。
今回は60分のショートバージョンですし、お子さんなどを相手にしている斎藤さんも大変気さくな方ですので、皆さんもぜひ、お気軽にご参加ください。
from: 藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ代表)