リベラルアーツカフェ141
哲学対話してたら、なぜに人生が楽しくなったのか?
~主観による主観のためのお話~
哲学対話してたら、なぜに人生が楽しくなったのか?
~主観による主観のためのお話~
第141回カフェは、対話系でこれまで何度も登場いただいている大音知子さんをお招きし、改めて現在の活動や今後に向けてのお話を伺う回としました。
大音さんは自身で、「小さな音を大きく捉えて、その人の心をつなぐのが得意」という特性を持ち、「人生の分岐点で納得できる選択をして、後悔のない生き方をしてほしい」という想いを持っていらっしゃいます。勉強嫌いになって人生を悲しんでいた友人の存在をきっかけに、自分で考えて選択できる力を養う学習塾を立ち上げ、遊びから体験できるワークショップを独自に多く生み出してきました。
学校や家庭のトラブルで生徒の勉強が手につかない状況に悩んでいた際、「哲学対話」に出会い、活動を再構成し始めました。大音さんが実感した効果というのは、例えば、対話の参加者の気持ちが整って冷静さが生まれ、ママ友コミュニティ等でありがちな「マウンティング」が消え、自己分析やメタ認知が始まったり、喧嘩ばかりだった家庭内でも実践してみたら、子どもが自分のモヤモヤを対話によって整理し、スッキリして眠りにつける関係を築けたり、また、「相手を思って伝えるべきことは伝える」という約束のもと、8人家族として円満に同居できたりしていることなど、多岐にわたっているそうです。
一方で、教育現場への対話導入にも積極的に活動されている大音さん。行政からは「実績がないと行政への働きかけは難しい」と言われ、地道に開催実績を増やしてきました。哲学カフェに参加した小学生から70代のうち約1/3が、不登校や人間関係などのリアルなモヤモヤを抱える個別の相談者になっていったということです。そこから、答えを直接与えるのではなく、対話を通じて本人の思い込みやしがらみを軽減するアプリをつくってみたいと、日々奮闘されています。
カフェの後半では参加者とのトークを。
ある参加者からは、地元で子育て支援を行う仲間が「育休からの復職時に生じる高い心理的ハードル」を下げるため、日々の日記データから考え方の傾向を抽出してフィードバックする自己理解アプリを構想していることが紹介されました。
また、「ファシリテータは話したいことを我慢し、交通整理に徹するため、精神衛生上良くないのでは?何が面白いのか?」という疑問が投げかけられました。これに対し、大音さんは「相談事として受け取らず『事例の1つ』と割り切って流し、相手の整理を待つ適切な質問を考えるプロセスが楽しい」と答え、他のファシリテータ経験者からも「どんな人と対話しても、自分のアップデートや自明の前提が揺らぐ体験が圧倒的に面白い。また、『ファシリテーターは責任を負わず、対話者全員の責任/手柄とする』というスタンスをとることで、ストレスを大幅に軽減できる」「自分の中でメタ(俯瞰)と主観がジェットコースターのように切り替わる感覚が楽しい。他人の言葉で学ぶことは、教科書から学ぶことと全く違い、非常に勉強になる」といった意見も交わされました。
別の参加者からは「移動時間自体を楽しんでいれば時間は『払っている』のではなく『受け取っている』のではないか」という哲学的な問いを提示され、大音さんは「若い人はタイパ(タイムパフォーマンス)を意識して興味のないことに対する切り替えが早い」としつつ、自分自身は資料を作る時間さえも「会いたいから楽しい時間」として受け取っていると回答しました。他の参加者からも若手がレスポンスの速さを求めがちな傾向に対し、「ゆっくり考えて、優先順位をつけて仕事をする」よう切り分けて対応している、と語りました。
別の意見として、「家庭で妻の話を評価せず聞き続けたら、自分自身が不愉快になった」という実体験に基づき、整理されていない言葉を直接聞く苦痛を緩和する「ワンクッションを挟むアプリ」の価値を肯定する一方、大手のAIと競合するレッドオーシャンを避けるため、「スナックのママのような、癒やしと壁打ちのコミュニケーションプロの再現」や「ビジュアル要素の導入」を提案する方も。これに対し、大音さんも、「整理されていない言葉を直接聞くことは時間を切り売りする感覚になって辛いため、アプリが『交通整理のクッション』となる教育ツールを目指す」と応じました。
更に別の方は、「話がまとまっていなくても良い哲学カフェと、整理を求める対話の違い」「長尺で話し続ける参加者への対応」について尋ねました。大音さんは「参加者の顔出し(表情)から困惑を判断し、話が長い人には「多めの相槌」を打つことで、ちょっかいを出す(割り込む)隙を作り、おうむ返しで整理したり、他人に話題を振ったりしてコントロール」したり、私からは「発言が長くなりそうな時にはオープニングや途中で「一発言、一通りで」といったルール化を提示してコントロール」したりする事例を挙げました。
今回も濃密な対話が展開されました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
[文責:藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ 主宰)]
1月のゲスト:大音 知子(おおと ともこ)さん
(マザーズガーデン~子どもワクワク教室「あすなろ」~代表)
テーマ:哲学対話してたら、なぜに人生が楽しくなったのか?~主観による主観のためのお話~
日時:2025年1月24日(金) 20:00-21:30
開催場所:オンライン・・・zoom利用
参加費:無料
定員:15名
お申込み:https://la-cafe141.peatix.com または 表示のフォームから
ご質問等は info@la-tochigi.net でも受け付けます。
今回はカフェ123「正義の“見”方~悪い子と良い子に境界線はあるか~」以来、1年半ぶりの大音さんゲスト回です。
大音さんといえば哲学対話ですが、今回は対話メインではありません。大音さんがこれまで実践してきた対話活動について振り返り、対話のこれからを考えてみようという企画です。新聞連載をするなど多彩な活動をされている大音さん、私もお手伝いしている中で「一度アウトプットしてみたら?」という提案から今回の企画に繋がりました。
もちろん、哲学対話が初めての方や知らない方でも大歓迎です。皆さまのご参加をお待ちしております。
from: 藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ代表)