リベラルアーツカフェ139
みちを切り拓く手作りの科学館から
科学コミュニケーションの未来を考える
みちを切り拓く手作りの科学館から
科学コミュニケーションの未来を考える
今回は久々のサイエンス系テーマです。私も所属している日本サイエンスコミュニケーション協会(JASC)の会長に今年度就任された羽村太雅さんがゲスト。羽村さんは、千葉県柏市で空きアパートをリノベーションした手作り科学館Exedraの館長を務める他、様々なサイエンスコミュニケーション活動をされてきました。今年度新たにJASCの会長になられた羽村さんには、私自身も大変興味があり、色んなお話を聴いてみたく、ならば皆さんも一緒の方が楽しいかも・・・というきっかけで企画しました。
今回も全国各地から参加があり、とちぎサイエンスらいおん時代からの参加者もいれば、JASC関係者もいる、といった出会いも含みつつ、スタートしました。
羽村さんは高校生の時に「後世の教科書に名前が載るような有名人になりたい」という壮大な夢を抱いたことをきっかけに、物理から宇宙研究の道へと進みました。大学院時代には、アストロバイオロジー(宇宙生物学)に関わる研究を行っており、土星の衛星エンセラダスの南極から噴出するプルーム(噴水)に生命の材料がある可能性に着目し、世界最高峰のアルマ望遠鏡を用いて観察できないか試みたり、地球における初期生命の誕生と巨大隕石の大量衝突の関係を明らかにするため、JAXAで長いピストルを用いて衝突現象を再現する研究をしたりしていたそうです。
また、羽村さんは、科学コミュニケーションを「アカデミア(科学)と人々をつなぐこと」と表現し、その変遷を自身の経験とともにお話されました。1990年代後半はアカデミアから市民への一方的な情報発信やアウトリーチが主流の時代。2005年頃からは、それまでの一方的な講演から、フランクに語り合う「サイエンスカフェ」が各地で流行し、双方向性が注目される一方、知識の差から「お茶付きの講演会」と揶揄されるイベントが増えたり、すでに科学に関心が高い層ばかりが集まったりする偏り(グラデーション)が生じる面も。やがて、サイエンスカフェ2.0として、 羽村さん自身も、従来来なかった女性や若者、科学に関心のない層に来てもらうため、クリスマスコンサート(研究者による演奏)や、料理、化粧品をテーマにした異分野融合の試行錯誤を重ねました。
イベントが個人に紐付いて終わりになりがちな課題を克服するため、羽村さんはマクロな「社会の仕組み」へと活動を広げる仕掛け作りに注力しています。
地域活性化や他分野とのコラボレーションとしては、香取市で香取神宮に収蔵される同鏡のレプリカを鋳造・研磨する体験を行い、参加者に市内の宿泊施設に安く泊まってもらう座組みを構築、柏市では地元商業と連携し、体験を通してお金を落としてもらう仕組みをプラスした「太陽系ウォーク(スタンプラリー)」を実施、また、鳥獣害(獣害)問題について、都市部の人々にも関心を持ってもらうため、農村でのリアルな課題を基にした教材やワークショップを開発したりもしてきました。
大学での非常勤講師としても活動されており、レポートの書き方などを学ぶ必修教養科目(アカデミックスキル)の中にサイエンスのテーマを混ぜ、放っておくと一生科学に触れない文系学生に接点を作っています。
本業でもある、手作り科学館「Exedra(エクセドラ)」の運営について。
千葉県柏市にある古い空きアパートをボランティアと共にDIYで改修したアットホームな科学館。2018年の開館以来、累計で6,000人以上が来場、大人数をさばくのではなく、1組ずつ「1対1」で丁寧に対話案内するスタイルを取っています。小中学生を研究者に育てる取り組みとして「研究部」を設置、56名ほどの子供たちが在籍。お楽しみ(実験入門)、初級、中級、上級(自ら問いを立てて研究する)の4コースがあり、高崎や横浜、千葉市など、遠方からも子供たちが柏まで通っています。
2024年6月からは、約400名の会員を抱える日本サイエンスコミュニケーション協会(JASC)の会長として個々人の実践的な活動や資格認定などをサポートするプラットフォーム作りを行っています。
ここまで羽村さんに話題提供いただき、質疑・ディスカッションへ移りました。
Q. 学校教育との連携や計画はあるか?
A: 学校教育には学習指導要領など厳格な体系があるため、無理に入り込もうとするよりは、**「学校ではできないことを補完する場所」**を学校外で作ることに個人としては注力しています。
Q. イベントのテーマはどのように決めているか?
A: テーマよりも先に「喋ってもらう人(面白い研究者)」を決め、その人の話に合わせてテーマや最適な形式(人数やスタイル)を組み立てていく「ナンパ型」の設定をしています。
Q. 学校の部活動(科学部)とのコミュニケーションはあるか?
A: 現状はありません。本業ビジネス(持続可能なサービス提供)として行っている活動と、学校部活動の地域移行や金銭的なギャップ、受け入れ体制の面でハードルがあるためですが、関係を遮断するつもりはなく、今後の連携を模索していきたいと考えています。
Q. 羽村さんの考える「生物の定義」とは?
A: 専門家のように「代謝や細胞分裂、子孫を残す機能」を否定はしませんが、物理出身の自分としてはあえて定義をあやふやにしています。厳しく定義すると可能性を狭めてしまうため、「自分自身が発見したときに興奮できるもの」を生物と捉えています。
Q. 子供たちに面白がってもらうにはどうすればいいか?
A: 2つのアプローチがあります。1つは「本物(標本や第一線の研究者)に触れる体験」、もう1つは「未知なることを自分自身で解き明かしていく探求の体験」です。また、科学に興味のない段階、少し興味を持った段階など、それぞれの「ステージ」に合った多様なプレイヤーと選べる環境が存在することが大切です。
久々のサイエンステーマということもあり、色々と拡がりのある回となりました。羽村さん、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
[文責:藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ 主宰)]
11月のゲスト:羽村 太雅(はむら たいが)さん
(日本サイエンスコミュニケーション協会会長・手作り科学館Exedra館長)
テーマ:みちを切り拓く手作りの科学館から科学コミュニケーションの未来を考える
日時:2024年11月25日(月) 20:00-21:00
開催場所:オンライン開催(zoom利用)
参加費:無料
定員:15名
お申込み:https://la-cafe139.peatix.com または表示のフォームから
※書籍紹介希望の方は、申込フォーム内の連絡事項欄に書籍名をご入力ください。
ご質問等は info@la-tochigi.net でも受け付けます。
久々のサイエンス系テーマです。今年度、日本サイエンスコミュニケーション協会(JASC)の会長となった羽村太雅さんがゲスト。
羽村さんは、千葉県柏市で空きアパートをリノベーションした手作り科学館Exedraの館長を務める他、様々なサイエンスコミュニケーション活動をされてきました。
私も所属しているJASCの会長になられた羽村さんには、私自身も大変興味があり、色んなお話を聴いてみたく、ならば皆さんも一緒の方が楽しいかも・・・というきっかけで企画しました。
ですので、私もほとんど予備知識なく参加します。今回は60分のショートバージョンです。どうぞお気軽にご参加ください。
from: 藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ代表)