リベラルアーツカフェ126

哲学対話で考える「科学」のこと

リベラルアーツカフェVol.126レポート

 今回のカフェは初コラボ! 国内最大級の科学祭「サイエンスアゴラ2023」のオンライン版に出展しました。サイエンスアゴラは従来、東京・お台場地区を会場として、対面型のたくさんの企画・ブースが出展するフェスティバルでしたが、コロナ期にオンライン版として継続、現在はオンライン・対面それぞれ別日程で独立した、という経緯を持ち、更に規模が大きくなったイベントとなりました。オンライン版は2023/10/26-28の3日間開催され、リベラルアーツカフェは最終日・土曜午後のセッションとなりました。

 サイエンスアゴラ2023ではすべての出展イベントで「対話」を重視するため、オンライン版では時間内に参加者との対話の時間を設けることとなっています。本カフェではもちろん対話を実践するため、他のセッションよりも対話時間を長くし、30分程度の解説ブロックと60分程度の対話ブロックで構成しました。前半の解説ブロックでは私の方から、これまでのカフェの経緯や哲学対話の解説などを行いました。このブロックは公開ブロックのため、後日、サイエンスアゴラから動画が公開される予定です。どうぞご覧ください。

 後半の対話ブロックでは、30名ほどの参加者が引き続き残っていただきました。通常の対話では自己紹介やアイスブレイクなどを行いますが、今回は短時間の体験版なので、対話に参加したい約10名ほどの皆さんから「科学」について思うことや問いなどを一言ずついただきました。その中から最初の取っ掛かりとして「科学の良い面・悪い面」というテーマでスタートしました。

 初めは科学の「正しさ」についての善悪の話となりました。数値やデータなどで示される「真理的」な正しさと、「道徳的・倫理的」な正しさの2種類があるのでは?という説も出されました。これらについて様々な話が出てきましたが、医療現場では時に医学的根拠よりも個人や周囲の意思が優先されることもある、という話などは印象的でした。

 対話の後半では、 科学の新しい技術や発見により人々は知見を得られる一方、恐怖を生む側面もある、といった科学による「恐れ」についての話題が展開されました。一部の優れた研究者たちが何をやっているのかが見えない・分からないことによって、人々に科学への恐れの感情が生じる、という歴史が繰り返されている、といった話も出てきました。この「何をやっているか分からない感」や「詳しさの差」などから生じる恐れは、リスクコミュニケーション・クライシスコミュニケーションにつながる話かもしれないとも受け取りました。

 最後に対話参加者から簡単にリフレクションしていただきましたが、その中で「生成AI」についての不安などに触れる話がいくつかありました。もしかしたら今日の続編的な話が出来るかもしれません。別の機会に企画を考えてみようと思います。また、対話に直接参加しなかった見学者の皆さんも最後までしっかり話を聴いていたかと思います。哲学対話のルールの一つに「ただ聞いているだけでも良い」というものがあります。傾聴し思考していれば場の参加者である、という考え方に基づけば、見学者もきちんとした参加者であるとも言えるでしょう。初めてお会いする方、初めて哲学対話に触れる方もいらっしゃったかと思います。すべての参加者の皆さま、ご参加ありがとうございました。

[文責:藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ 代表)]

リベラルアーツカフェVol.126(2023/10/28)開催のお知らせ

ご質問等は info@la-tochigi.net でも受け付けます。


 前回までの2回ははこだて国際科学祭での出展企画でしたが、今回は国内最大級の科学祭「サイエンスアゴラ2023」のオンライン版出展企画です。コロナ前は東京お台場地区での対面開催でしたが、コロナ中でのオンライン版開催を経て、現在は対面とオンラインそれぞれ独立日程での開催となっております。対面・オンライン共に多くの企画が出展されていますが、その中の一つが当カフェとなります。

 今年のサイエンスアゴラは全企画に「対話」を盛り込むことが必須となっており、まさにリベラルアーツカフェにびったしの内容となっております。そんなわけで、今回のテーマはずばり「科学」についての哲学対話です。ただし、初めて参加する方や、たまたま立ち寄る参加者も多くなると予想されるため、哲学対話の概要やこれまでの事例などを解説する公開セッション30分と、セミクローズ形式の対話体験60分という構成となります。

 いつもとは違った対話を体験できるかもしれません。ぜひご参加ください。

from: 藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ代表)