リベラルアーツカフェ159
データからみる参加のデザイン
データからみる参加のデザイン
今回のカフェも情報通信月間参加行事として、宇都宮大学地域デザイン科学部コミュニティデザイン学科教授の石井大一朗さんをゲストにお招きしました。石井さんとはまちづくりの関係で以前からの知己でもあり、今回のゲストにお呼びする運びとなりました。「データからみる参加のデザイン」と題し、地域活動への参加のトレンドについてお話しいただきました。
前半は石井さんからの話題提供。スライドを使いながら、最近のトレンドについてお話いただきます。
「分かり合えなさ」を前提とした地域づくり
昭和の拡大成長期のように、共通の暮らしのイメージや価値観を共有し合える時代は終わり、現代は多様化が進み、例えば20代の10人に1人は国際居住者であるという実態もあります。これからは「全てを分かり合おう」とするのではなく、分かり合えないバラバラな人たちが、バラバラなままで何とか一緒に関わり合っていくための社交性やスキル(接触交流)が重要になる、といったお話から始まりました。
統計データが示す「参加しやすい人」の傾向
石井さんから参加者へ「地域活動やボランティアに参加しやすい人の属性」についてのクイズが出されます。調査統計によると、「家族の人数が多い」「友達が多い」「財産(持ち家)がある」「学歴が高い」等だそうで、 その一方で、意外にも「地域の課題を多く知っていること」と「実際の活動への参加(行動意欲)」には統計的な相関関係が無いそうです。課題を声高にアピールするだけでは人は動かず、参加を促すにはコーディネートの仕掛けや工夫が必要となりそうです。
課題から始めない「ドラえもん思考(ウィル型思考)」
課題解決(〜しなければならない)から入るのではなく、「あんなこといいな、こんなこといいな」という「ありたい状況」を描き、現状とのギャップを自発的なニーズとして自覚して行動する「ドラえもん思考」といったアプローチがあるようです。
事例として、静岡県裾野市で開催された「何もしない合宿」を取り上げていただきました、 「防災訓練」という義務的な課題ではなく、「みんなで体育館に泊まってみたい」という子供や親たちのありたい姿から実現され、最終的には参加した若者が消防団に加入するなどの好循環を生んだそうです。
世代ごとの参加動機と「グループ動機」の発見
再びクイズで、人が地域活動に参加する際の動機は、世代によってどう異なるのか?というお題。
若者(20代〜30代)は、参加することで何かを学べるかという「技術習得」を最も重視し、高齢者は、他の世代に比べて「社会適応(社会との繋がり)」や「理念の実現」を重視するとのこと。また、活動に関心の薄い高校生については、従来の動機では説明がつかない一方、「〇〇ちゃんが一緒なら参加する」「そこに〇〇君がいるなら行く」という「グループ動機」が存在することが実証されているそうです。
合意形成と活動の賛同度
さらにクイズは続き、栃木県内での中学生以上を対象とした調査から、地域住民の賛同度に関するクイズも出されました。
賛同・合流しやすい活動としては、「自治公民館を自由に使えるようにする」「趣味やお稽古ごと」などで、相手を深く知る必要のないゆるい関係(顔見知り程度)が、新たな関わりやすさを生みそうな一方、賛同・合流しづらい活動としては、「子供の居場所・学習支援」「祭りや催し」などという、こちらもまちづくりの観点からはやや意外な一面も。賛同しづらい活動は一部の熱量が高い一方で、強く拒絶する人もおり、意見が両極端に分かれやすいため、丁寧な調整や異なるアプローチが必要とのことです。
あえて「コンフリクト(モヤモヤ)」を生み出す意義
コミュニティ内での安易な繋がりや共通目標の強要は、熱量の差などから乗っかれない人々を「排除」することに繋がります。バラバラなままで接触し、そこで生じる小さなコンフリクト(摩擦やモヤモヤ)を認め、対話を通じて乗り越えていく練習を積むことこそが、これからの強い地域社会づくりにおいて必須となりそうです。
これらの話題提供を踏まえて、質疑や意見交換が行われました。
地図の専門家として、イベントが一過性で終わる課題への解決策として「ボードゲーム」に着目されている参加者は、イノシシ対策ゲームの事例を挙げ、ゲームという手段が「レクリエーション」や「技術習得」などの動機を複数含み、多様な人のコミュニケーションのハードルを下げるのに有効であると指摘。
また、ある参加者からは、かつての「全員が同じテレビ番組を見ていた一億総共通の時代」から、現在の「各自が自分の盛り上がるところ(YouTubeなど)だけで過ごすバラバラの時代」への変化を感じ、バラバラを前提とした「さじ加減」の難しさに共感した、という感想が。
さらに別の参加者からは、コンフリクトは高すぎると挫折や防衛に繋がるが、「少し頑張れば手が届く(交渉次第で解決できそうな)大きさ」にコントロールすることで、人の主体的な行動(原動力)を促すことができそう、と話しました。
参加者の年齢層が比較的高いこともあり、地域参加の意欲も高い層である一方、若年層とのギャップを知る機会にもなり、意義ある回だったように見受けられました。今後の皆さんの活動に繋がると良いと思います。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
[文責:藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ 主宰)]
7月の話題提供者:石井 大一朗(いしい だいいちろう)さん
(宇都宮大学 地域デザイン科学部 コミュニティデザイン学科 教授)
テーマ:データからみる参加のデザイン
日時:2026年7月1日(水) 20:00-21:00
開催場所:オンライン開催(zoom利用)
参加費:無料(カンパチケットあり)
定員:15名
お申込み:https://la-cafe159.peatix.com または表示のフォームから
ご質問等は info@la-tochigi.net でも受け付けます。
今回のカフェは、宇都宮大学教授の石井大一朗さんをゲストにお招きいたします。石井さんの所属する地域デザイン科学部には私がかつて在籍していた学科もあり、折に触れて関わりのある所でもあります。
石井さんの所属するコミュニティデザイン学科は、まちづくりに関する「社会制度・システム」「地域資源」「共生社会」の3つの柱を軸とした各種の実践・研究を行っています。石井さんの専門はコミュニティ政策、非営利組織論などですが、今回は、社会調査の分析結果を踏まえて、人々の「楽しい」や「参加」を考える、そうした話の場が出来れば・・・とご提案いただいております。
どうぞお気軽にご参加ください。
from: 藤平 昌寿(リベラルアーツとちぎ代表)